- 研究内容
- 研究実施体制
背景
近年、潰瘍性大腸炎とクローン病(総称して炎症性腸疾患)の治療に免疫抑制薬や生物学的製剤が使われるようになり、治療選択肢が充実してきました。その結果、病態の進行を遅らせるだけではなく、臨床的寛解を導くことが可能となり、さらには粘膜治癒を目指すことが治療目標となりつつあります。今後も新薬の登場が見込まれており、炎症性腸疾患患者さんを取り巻く治療環境は日々変化しています。
炎症性腸疾患は、厚生労働省から「難病」に指定されています。炎症性腸疾患に対する代表的な取り組みとして、厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」が挙げられます。本事業の一環として臨床調査個人票(患者さんが難病医療費助成を申請する際の診断書)を活用した疫学研究により、患者数、年齢、さらには治療の実態把握などが行われてきました。しかし、2018年の難病疾患における医療費助成基準の統一化に伴い、軽症の患者さんは原則として医療費助成の対象外となりました。その結果、臨床調査個人票を用いて軽症の患者さんの情報集積をすることが出来なくなり、炎症性腸疾患の実態を定期的に明らかにしていくことが難しい状態となっています。
2016年の全国疫学調査では、全国有病者数は潰瘍性大腸炎で約22万人、クローン病で約7万人と推計されています。炎症性腸疾患の中でも特に患者数の多い潰瘍性大腸炎は、患者さんの食事や就労など長期にQOLを低下させます。また、炎症が慢性的に続くことにより、大腸がんに進展するリスクもあります。新たに疾患レジストリを構築し、潰瘍性大腸炎の予後、治療の最適化に関わる因子の探索は、今後の新薬・新治療法の開発に重要な知見をもたらすものと考えられます。
目的
本研究では炎症性腸疾患のうち、患者数の多い潰瘍性大腸炎に対する疾患レジストリの構築を目指しています。患者さんの日常診療情報やQOL情報を横断的縦断的に解析し、潰瘍性大腸炎に対する治療戦略に関わる情報の創出を目的としています。
UMIN登録
登録番号:UMIN000041103
URL:https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000046767
研究対象
選択基準
- 同意取得時に18歳以上の患者
- 同意取得時に「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」の潰瘍性大腸炎診断基準治療指針に準じて潰瘍性大腸炎と確定診断されている患者
- 研究対象者本人から文書による同意が得られた患者
除外基準
- 研究責任医師および研究分担医師が不適当と判断した患者
目標症例数
5,000例
研究期間
研究期間:2019年8月14日~2027年11月30日
情報収集スケジュール
項目\時期 | 同意取得時 | 研究開始時 | 診療時 | 適時*2 |
---|---|---|---|---|
同意取得 | ○ | |||
適格性の確認 | ○ | |||
登録 | ○ | |||
背景情報 | ○ | |||
診療情報 | ○ | ○ | ||
QOL情報*1 | ● |
○:必須事項 ●:非必須事項
*1:研究に同意された患者さん本人が各自のスマートフォン等を用いて入力を行う。
*2:スマートフォン等によるQOL調査の実施が可能な研究に同意された患者さんのみ、少なくとも6カ月に1度程度の頻度で、QOL調査を依頼する。
研究機関からデータベースへの情報提供方法
各研究実施医療機関の電子カルテよりSS-MIX2ストレージへ集積されたデータのうち、本研究のために抽出する項目として設定されたデータが、データ収集システム(研究実施医療機関内のサーバ)へと送信され、匿名化された後に保管されます。
各研究実施医療機関は、データ収集システムに保管されたデータを、適切なタイミングでDVD等の記憶媒体へ書き込み、メビックス株式会社へ送付します。
また、研究に同意した患者さんに回答いただいたQOL調査のデータは株式会社アクセライトのePROデータベースへ集積され、適切な間隔でメビックス株式会社へ送付されます。
メビックス株式会社へ送付されたこれらの情報は患者さんごとに割り当てられた登録番号*を用いて統合され、レジストリを構築します。
*この研究のために割り振られた番号で、患者さん個人を特定できない番号。
研究実施体制
2024年12月1日以降
研究依頼者・共同研究機関
一般社団法人日本炎症性腸疾患学会
研究代表医師
東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科
松岡 克善
研究事務局
一般社団法人PeDAL
共同研究機関(実施医療機関)
- 北里大学北里研究所病院
- 東京科学大学病院
- 旭川医科大学病院
- 九州大学病院
- 滋賀医科大学医学部附属病院
- 岩手医科大学附属内丸メディカルセンター