成功事例の紹介① 日本赤十字社旭川赤十字病院    上山 圭史先生

日本赤十字社旭川赤十字病院 上山 圭史先生
asahikawa


旭川赤十字の紹介
・現在の実際の病床数は約420床で、医師数は
 120名である。
・日本で最北端のドクターヘリの基地となって
 おり、救急救命センターがある。

心臓血管外科の紹介
・現在、主に3人の医師で年間300例超の
 心臓血管・呼吸器の手術を行っている。

TE患者が多い理由について
・脳外科と整形外科の手術を行う患者が多く、消化器系の癌の患者も増加傾向であるので
 VTE患者が多い。
・ドクターヘリの基地病院のため、救急の患者で高エネルギー外傷があるDVT患者が多い。
・DVT、PEは合計年間50-70症例であり、そのほとんどが心臓外科に紹介される。

術中の肺梗塞を防ぐためのガイドラインについて
・12年前に、下肢静脈瘤があった患者が脳外科手術中に肺梗塞を起こし死亡した事例が発生した。
 それ以来、下肢静脈瘤がある症例は全例手術前に麻酔科がチェックし、心臓外科の外来を
 受診するようになった。その結果、心臓外科外来だけでは手が回らなく混乱したため、
 下肢静脈血栓予防ガイドラインが作成された。
・ガイドラインは全18ページであり、診療科ごとに、患者のリスクごとに分けた治療法が
 記載されてある。ガイドライン運用後、整形外科では下肢手術のため術中は困難な2例の
 術中肺梗塞例を認めているが、それ以外の手術では術中肺梗塞を認めた症例はいない。

症例の紹介
・脳出血を起こし、その後下肢静脈と肺動脈に血栓を認め、イグザレルト内服で治療を開始した
 症例がいる。
・脳外科の手術施行患者に適応のある薬剤がないため、イグザレルトが脳外科の手術施行の症例に
 対するVTE予防の適用となることを願っている。

最後に
・現在、本研究に12例登録しており、そのうち出血合併症で1例中止している。
・肺梗塞によるショックでPCPS使用し、離脱後にイグザレルトを使用した症例も1例登録して
 いる。
・秋になり症例が少なくなり登録のスピードはが鈍ってきている。今後、NOACに高リスク患者の
 術後血栓予防の適応が追加されることを願っている。

質疑応答
Q:医師3人の診療体制で、研究の同意取得後から登録まで行うことは大変ではないか。
  (平山先生)
A:研究参加への同意説明で断られたことはない。入院患者さんは少し心配される場合があるが、
  外来の患者は比較的スムーズに了承頂ける。(上山先生)

⑧発表に対するコメント
紹介頂いた脳出血の症例のように、当院でも脳血管疾患の症例のVTEをどのように予防できるかを
検討している。IPCが有効であると考えられるが、どの病院もIPCの台数が少ないためもどかしさを
感じる。今後、IPCについても考えていかなければならないと感じた。(孟先生)

脳外科関連疾患のVTE患者はかなり多い。予防としての薬物療法が難しいが、脳外科関連疾患の
VTE患者の血栓は非常に大きく、当院では4例程1~2週間目のリハビリの歩行時に心肺停止にも
至るケースがあった。今後、このような症例の治療について検討する必要がある。患者に十分な
インフォームドコンセントをとった上で、適切にDOACを使用し、治療することが良いのでは
ないか。ただし、強化療法を実施するのは難しいかもしれない。(福田先生)

今回紹介した症例はイグザレルトで強化療法を行い、特に合併症等なく、血栓も消え問題は
なかった。(上山先生)

脳神経の医師によると、出血は怖くないので心房細動の患者でも早めに抗凝固療法を始める
とのこと。患者さんにとってどのような治療がベネフィットとなるのかは、今後検討して
いかなければならない。(平山先生)